イギリス・シェフィールド出身のロックバンド・Arctic Monkeysの6枚目のアルバム「Tranquility Base Hotel & Casino」。
Tranquility Base Hotel & Casin
およそこれまでのArcticらしくないという事前情報は耳にしていましたし、
実際これまでとは笑えるくらい違うのですが、僕はこのアルバムめちゃくちゃ好きです。
彼らがバンドを始めたきっかけのTHE STROKESの2nd→3rdくらいの変わりぶり。
これまでの分かりやすいバンドサウンドはほぼ見受けられず、(パワーコード出てこない)
日本のみならず全世界的にも「こんなのArcticじゃなくてAlexのソロでやれよ」っていう声が絶対あがると思うんですが、
僕はそういう意見に対しては反対派です。
なぜかというと、このアルバムのサウンドは「ロックバンドの音」ではないし、「これまでのArctic Monkeysの音」でもないけれど、「Arctic Monkeysというバンドの音」ではあると思うから!
Alexのソロ作「SUBMARINE EP」のように彼のアイデンティティーだけがただ放出されているわけではなく、
「Traquility~」をArctic Monkeysというバンドでやる必然性というのは個人的には凄く感じられます。
僕は「SUBMARINE」、大好きなのですが!
また、ロックバンドの音じゃないということをどう思うかっていうのは、ある種彼らに対しての踏み絵的な要素になってくるんじゃないかと。
Alexの音楽的才能はロックという狭いジャンルに収まるようなチンケなものじゃないですから、どんどんジャンルを横断して深化していくような活動になっていくのは目に見えているわけで。
その部分をどう捉えているかによって大きく評価は変わる気がします。
とはいえ、「1stからどんだけ変わってんねんw」っていうのは確かなので、色んな反応があって然るべきではありますが!
新作を好きな理由
正直今の僕にとっては、例えば「AM」も「Humbug」も、表現としては非常に大味に感じてしまうので、
「Tranquility~」で展開される繊細なアンサンブルや、内包されている芳醇な音楽的アイデアは大歓迎です。
逆に、極めてパンキッシュでメロディックな「Whatever~」に衝撃を受けていたティーンの自分であったなら、
「Tranquility~」は「地味過ぎる」「意味分からん」で終わっていたと思います。
あと、このアルバムは「スルメ盤」的な言われ方を絶対されるはずですが、僕は初聴時から「あっこれはめっちゃいいわ」状態になりました。
実はArcticに対してそういう感想を抱いたアルバムは1stだけで、「聴きまくった上で超名盤に昇格したアルバム」は僕の中では無いんです。
また、これまでのリスナー人生の中で「アルバムの1曲目が良すぎてそればっかりリピートしてしまってなかなか次にいけない」っていうケースはよくありましたが、「Tranquility~」はまさにそれでした。
結果的には、2曲目以降も同じくらい良かったので、早く次に移るべきでしたが!
せっかくなので、その1曲目だけ紹介しておきます。
「俺はただストロークスの一員になりたかっただけだった」という一節で始まる「Star Treatment」。
近年の楽曲にもこういうテイストの曲はありましたが、ブルースやオールドロックに寄りすぎていて正直ダサいと感じる部分もありました。
ですが、この曲では段違いにサウンドが洗練されてます。
全然違うんですけど、なんとなくこれを思い浮かべたほど。
アルバム全体のムードは完全にこの1曲目がオーガナイズしている感じなので、これが気に入った方は、アルバム聴く価値があると思います。
Tranquility Base Hotel & Casin